9〜10日は世田谷のスタジオにてマーチンさんバンドのリハーサル。なにせ今回総インプット数が120本あまり。2バンドに跨っているとは言えやはり尋常な数ではない。通常ならばモニター卓のみ持ち込むんだが、今回はフロント卓も持ち込み。全て当日と同じようなシステムを組んでのリハ。リハなのに当日朝9時入りで仕込むという(笑)そこまで現場と同じ。で、リハは大きなトラブルもなく一旦11日の夜に全てバラして終了。(PM-1DとMIDAS XL-4を持ち込む大変さは判る人にしか判らないだろうなぁ。w リハスタにこんなの二台並べないで下さい!的な。w)
いつも世話になっているアコースティック佐藤ちゃん。後ろに隠れているのは、これまた神エンジニアの磯村さん。今回佐藤ちゃんと磯村さんがモニターエンジニアでした。
で、11〜13日はいとう(せいこう)君、康本(雅子)さんとアサヒ・アートスクェアーでセッション。朝一で入ってせっせと仕込んでゲネやって本番。翌日はエゴ(ラッピン)森君がギター参加なのでこれまた早めに入ってリハーサル。本番はE2-E4な雰囲気になって面白かった。で翌日無事に千秋楽を迎え、その足で王子でやっている相方の稽古場に向かい道具の積み込み。翌日は相方制作のお芝居現場にサクッと搬入。そのままベスタクスでデスクワーク。
火曜日。朝一でスタジオに入り金曜日まで怒濤のリハーサルの再開。昼から夜まで缶詰。入れ替わり立ち替わりゲストミュージシャンが現れるので大変。全ての楽曲を予習復習用に持ち帰るのでその為のミックスはこちらがやる。ミスは許されないので意外に休んでいる暇がない。なかなか過酷であります。18日金曜日にバラして積み込み。束の間の休息で土曜日は芝居を観に行き、日曜日はお芝居の方のバラし。といっても、今回は大道具も少なくてあっという間に終わる。打ち上げには参加せずに帰宅して音制作作業。
21日は上野水上音楽堂で行われるヤン(富田)さんのライブに集合の号令がかかったので観戦。だけの予定が、いとう(せいこう)君、(高木)カンちゃんと三人でボーヤに早変わり。楽器セットしてライブ鑑賞。
ステージ上のヤンさんシステムから会場をパチリ。
終演後はバラして積み込み。浅草橋で稽古場終わりの相方達と合流しCP高いイタリアンで晩飯。
22日。始発の新幹線で一路大阪。9時に大阪城ホール入り。PA機材11t二台をバイト君を駆使しての人海戦術。ながーいスロープをひたすら搬入。ちなみに今回のアウトシステムはこんな感じ。
メインはバーテックVT4889が14対向。スタンド用に同じく4889を6対向。アコースティックのサブローはVT4880ではなくSRX728Sの組み合わせ。この組み合わせはかなり自分の好みです。こいつを10対向。
でここからが肝心。今回のツアーはいつもお世話になっているアコースティックチームとパブリックアドレスの共同作業。特に「パブリックアドレスの武井さんのバーテックのチューニングっぷりはもの凄い」と話に聞いていたのでチューニングにはベタで張り付いて観察。
いやーマジで目から鱗。凄いわ。コンツァとかレイクとか単発でシンプルに使ってるのはお馴染みなんだけど、既にディスコンになったドルビーレイクを使ってのラインアレイのセクション分けとか管理システムのレイヤー具合とか、調整時だけではなく本番中もデータ拾ってて俺の好みとか音のバランス具合とかも即座に対応してくれる。(笑)どんなときにどこの音が暴れ、それをどのように対処をして解決したか。それら全てが全てのセクションであとから解析できる。そうする事で、現場で一発勝負的な要素を減らし次への対策ができる。すなわち時間との勝負になる現場ではプライスレスな価値がある。本当に凄い事だと思う。
そしてもう一つ。スピーカーというのはチューニング一つで糞にも金にもなる。それがはっきりと分かった。LOWとLOWMIDのチューニングの仕方には各PA業者、チューニングする人間の「いい音に対する考え方」で大きな違いがでる。勿論、誰でも基本はフラットに仕上げていくのだけれど、波形上で同じような成分が出ていてもその指向性や音の固まり具合はシステムエンジニアリングのやり方で全然違う。そのあたりのバランスはもうセンスの問題なのかな。だから自分の求めるサウンドとずれがある現場も多くて、ここ数年同じVertecのラインアレイを使っている現場で苦労する事も実は意外に多かった。特に今回は大阪城ホールと武道館。どちらも俺のミキサー人生で初めてのオペレート現場。手強い会場で自分の理想とする音が出せるんだろうか?それを考えると前日は殆ど眠れなかった。(いや、ただ単に朝4時半起きだったからかもしれないけどw)
そんな眠れぬままにバッキンバッキンに緊張して会場入ってセッティングして武井さんのチューニング。通常チューニングはピンクノイズでやるので巨大な砂嵐状態が続いて不快極まりないんだが、武井さんはなんと○○と○○○○の音でやる。持続音が続いてさえいればいいって事らしいんだが、これがまた気持ち良い。気持ち良くて睡魔ブーム到来しちゃいそうになりながらリハーサルに突入。俺の場合その日のミキシングがうまくいくかどうかは「KICKの出音」にかかっている。KICKが好みの音色で「ドンッ」と出さえすれば9割方終わったようなモノ。かようにスピーカーのチューニングは大事なのである。
リハーサル中も本番中も好みの音にグラフィックをいじるのではなく武井さんに「この胸のあたりに響くロー削ってくださ〜い」と言えばすぐに収まる。今回のツアー、自分はScoop On Somebadyと鈴木雅之、バブルガムブラザーズとアンコールのミキシングを担当。自分的にはイメージ通りの音が出せた。初大阪城ホールは武井さんのチューニングと外音に乗っかってモニターを作ってくれた磯村さん佐藤ちゃんのお陰であっけなく終了。俺的には渋谷AXやZEPPなんかより遙かに楽ちんだった。ライブはほぼ満員、大盛り上がりで無事終了。
で、我々は即座にバラし。搬入の時に下り坂だったスロープは当然のように今度は上り坂。バラして運んで積み込み終わったら時計はてっぺんを回ってた。弁当貰ってコンビニで飲み物買ってホテルの部屋で食べて意識失う。(笑)
翌朝6時半の新幹線で東京に戻り。そのまま武道館へIN。9時間ほど前に積み込んだはずの機材を下ろし搬入。スピーカつり込んでそれぞれ持ち場のセットをしてこの日は8時に終了。帰って相方のご飯を久しぶりに食べて束の間の安息。12時前にはフラフラに。布団に入って1.5秒で意識失う。
25日、朝一で先般のお芝居の借り物を返してから武道館に。荷下ろしのポカやっちまい速攻で踵を返し事なきを得る。完全に頭回ってない模様。予定より1時間ほど遅刻して着到。自分の出番には時間があったので影響は無し。(汗)で、武道館のセットはこんな感じ。
メインとサイドは同じなんだが、武道館一階用にワンサイズ下のVT4888を3対向。これやらないと1階席は全然音が届かないだと。で、武道館はこんな具合にサブローを置く。
なんでも単一指向性マイクの原理を逆に応用したものだとか。勿論裏表で同じ成分のソースを出しているわけではなくて武井さんのみが知る秘密の操作がなされている。ステージの中に向かって半分向いているわけだから大丈夫なのか?と不安になるが実際はステージ上はスッキリ。(一部モニ卓周辺は凄いことになってたらしいが。w)
こちらは俺のお仕事スペース。奥に見えるのがMIDAS XL4にサブ卓のMIDAS Venis。ここだけで60ch以上使用。手前は山玉社長のDegidesign D-show Profile。こちらにも60ch以上のインプット。でその間に鎮座ましますのはジーニアス武井さん。
初日は二階席の半分くらいが空席だったのでそのエリアあたりのスピーカーの出力が変更になったり。意外に中高域の音の周り方がハッキリ感じ取れたりしてこれまた面白い。初めての武道館だったがこちらも大阪城ホールと同じくでかいライブハウスでやっているのと全く変わらず。いや、冗談抜きで何一つ苦労することがない。最初からほぼ理想の音。故にやりたい放題。(笑)ここでは書ききれない位色々なノウハウを教えていただいて、勉強になることばかり。武井さんが居なかったらこうはいかなかっただろうな。本当に感謝。無事終演してチェックして11時には退館。
最終日はのんびりお昼前に入りチェック。昨日少し気になった部分と今日は超満員になる為、武井さんは表のチューニングを変えてきた。より理想のバランスに近くなったのだが、ほんの少しチューニングを変えただけで昨日のミックスバランスのままだと全然別物になってしまったのでリハーサルやりながら修正。かようにミキサーの腕の善し悪しなどチューナーのやってることに比べれば屁みたいなモノ。どんな大きさの会場でもスピーカーのチューニングこそが肝なのだ。
最終日も何の問題もなく進行。途中ちょっとしたトラブルはあったけど。(笑)
まぁ、それが一つの起爆剤になってトリのバブルガムの時にマスターフェーダードカンと上げて華麗にスーパーチャージかけまして。少々中高域は五月蠅かったかもしれないんだがもう過給器回っちゃってるからどうしようもない。(笑)普通にローをブンブン出すと下腹部を振動が突き抜けるんだが、もっと出すとバスドラムのローがキャノン砲のようになって脳味噌を突き抜けるのね。若者バンドの方をオペレートしていた山玉さんもチューナー武井さんも「ダブちゃん壊れたか?」と心配そうに観てたんだがあまりに気持ちいいローが出てるんで「オケー!」みたいな。当然会場は大盛り上がり。gdgd言われなければあそこまで本気な音も出さなかったわけで、そういう意味では某マネージャー氏にも感謝か。やっぱり最後の一押しの踏ん張りはアナログ卓スゲーです。これみんなの共通意見。プロ中のプロに認められて嬉しかったなぁ。そんな重低音を出しながらも、、、、、
これだけのボーカルマイクを同時に使用したわけですね。(笑)改めて「尋常じゃない」とはたと気がついて最終日のリハーサル前に写真に納めました。やっぱりこれだけのボーカルマイクをハウリング一つ起こさずにモニターやった磯村さんと佐藤ちゃん凄いわ。(笑)
ミュージシャンが武道館を夢見るようにPAエンジニアだって武道館は夢の舞台。この仕事を始めて27年。自分の頭に思い描いていた通りの音を出すことが出来て幸せなのであります。それもこれも、今回声をかけてくれたアコースティック佐藤ちゃん、PA界の大先輩、アコースティック社長の山玉さん、神モニターの磯村さん、そしてサウンドデザイナーのパブリックアドレス武井さん、アコースティックCREW、やんちゃな俺が作る音を巧くコントロールして温かく見守ってくれたクリエイト大阪の末永さん、真嶋さん他スタッフ全員のお陰。勿論、素晴らしい演奏をしたミュージシャン達は言わずもがな。
バラして積み込み終えたら時計の針はまたてっぺんを回ってた。(笑)スタッフの皆さんお疲れ様でした。
記録よりも記憶に残る音。会場の空気震わせてなんぼよね。これだから現場はやめられない。
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